「鎖骨に天使が眠っている」 ピンク地底人3号

ISに殺害された戦場カメラマン。カメラマンに同行していた義男。

中学からの友人だった透は義男に再会する。義男の父親の葬儀の日に。

死と埋葬。言葉の暴力。口紅とLGBT。

猫を助けようとして死んだ姉、一恵の友人が義男に言う。

「君の、鎖骨に、一恵が、眠っています」

 

関西弁は重さをはぐらかす言葉だ。

怒りや哀しみや正義をはぐらかして天使の羽を獲得した戯曲は

鎖骨からじわじわと胸骨に沁みてくる。

 

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「マクベス」 W.シェイクスピア

きれいがきたない、きたないがきれい。

三人の魔女の予言から生まれたマクベスの野心。

王を殺し国を手に入れたマクベスは、また予言どおりに

女の腹から生まれなかった者に滅ぼされる。

 

小説のように読むと台詞は長いし比喩は多いし

どこが面白いんだ?と思っていたシェイクスピアは

とにかく芝居にしないと始まらないのだ。

 

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「宮城野」矢代静一

天保八年(1837年)秋、宮城野という名の娼婦と写楽の偽絵師の二人芝居。

「焼けこげになりそうな人がいたら、あたいが身代わりになってやるんだ」

嘘も裏切りも蔑みをも軽やかに受け流して生きる宮城野。

写楽を殺して江戸を出奔しようとしている偽絵師。

嘘を重ねあう会話の中から真実が透けて見える。

 

不実な男の 人殺しの罪を背負わずにはいられない宮城野が

哀しくて愛おしくて、切ない。

 

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「私の恋人」上田岳弘

10万年前のクロマニヨン人だった「私」は恋人と世界を夢想する。

二人目の私はユダヤ人であり、三人目の今は日本人の井上由祐である。

純少女で苛烈で堕ちた女であるキャロライン・ホプキンスは私の恋人で

人類が惑星に行き渡った旅の三周目を歩いている…。

語り手は三週目の行き止まりの後の人類なのか?

 

8月に渡辺えりさんがこの本を脚色したお芝居をされる。

のんさんと小日向文世さんとえりさんという面白そうな組み合わせで

まずは原作を読んでおこうと思ったのだが…いやはや。
これがどうやって演劇になるのか、
イギリスのウナギゼリーよりも謎めいている。

 


「欲望という名の電車」テネシー・ウィリアムズ

欲望という名の電車に乗ってニューオーリンズの妹の家にやってきたブランチ。

没落する富裕な南部をひきずる姉と、新しい労働者のアメリカで生きる妹。

幻想の中に逃げるブランチは狂い、現実に生きるステラは赤ん坊を産む。

女の見栄と嘘、色恋沙汰と喧騒、男の傲慢。

豊かさを誇る者が惨めで、優しい者が残酷な刃を振るう。

ほぼ、ひと部屋の中で展開するストーリーは見事。

面白いぞ! テネシー・ウィリアムズ。 

 

 

 

 


その202「冷ややっこと醤油」

朝食は「朝ごはん」、夕食は「晩ごはん」と言い、

昼食は単に「お昼」と言っていた。

 

冷ややっこはお昼によく食べたように思う。

夕飯のときはネギと削り節としょうがが乗せられ

小鉢にちょこんと入ってお膳の脇に控えていたが

お昼には主菜として でかい顔をしていた。

 

かいちゃんはネギが嫌いだったし

お豆腐には何も乗せずにお醤油だけかけるのが好きだった。

 

母が買ってくるのはいつも木綿豆腐で

「木綿のほうが栄養があるねん」と言っていたが

同じ値段で 木綿は絹こしの倍の大きさだったから

そのせいではないかと かいちゃんは推測していた。

 

豆腐はまずスプーンの背でよくつぶす。

そのあと醤油をかけてぐちゃぐちゃと混ぜるのだが

醤油をどれくらいかけるかが難しい。

 

どれくらいかければいい?と母に訊ねると

「そんなん適当や」と答えるのだが

適当という量が分からないから訊いているのである。

 

ちょびっとずつ醤油をかけて味を調整していると

遊んでいるように見えるのか

「そんなふうに つぶして食べたらお行儀が悪い」と

今さらなことを言う。

 

冷ややっこをつぶそうがつぶすまいが

適当な醤油の量というのが難しいのだ、と

かいちゃんは聞こえないふりをした。


その201 「お豆腐屋さんの秘密」

家の近くのSPセンターという市場には

八百屋や肉屋や乾物屋や荒物屋など

ひと通りの店が入っていて、

ひとりでお使いに行くというよりは

母に連れられて散歩がてら買い物に出かけた。

 

たいていの店は商品を並べているだけだが

お豆腐屋さんだけはやけに広くて奥行きがあり

どうやら豆腐を作っていたようである。

 

買い物に行く時には豆腐の製造は終わっていて

店先にあるプールの中に豆腐が泳いでいるのと

店の床がきれいに洗われているのを見るだけなので

こんなに広いスペースが必要なのだろうかと

かいちゃんは常々不思議に思っていた。

 

ある日、たまたま早い時間に訪れたら

湯気の上がる鍋やら大きな水槽の間を

白い上着と白い帽子と白いマスクを着けて

膝まである黒い長靴をはいた人たちが

忙しそうに立ち働いているのを見た。

 

お豆腐屋さんの秘密の工場を覗いた気がして

かいちゃんはちょっとドキドキした。



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