「枯木灘」 中上健次

『紀州サーガ』と呼ばれる秋幸(あきよし)三部作の真ん中。

入り組んだ血のつながりの中でまっすぐに生きる秋幸は

愛も優しさも畏れも、人としての感情を豊かに持って成長する。

『あの男』の息子であるという他人の目、父への憎悪と憧憬、

自分を殺しに来る義兄の記憶は反復され、

26歳の秋幸は腹違いの弟を殺す。

 

神の視点なのかカメラの視点なのか

句読点のない文章はトリックのように時間をずらし

埃っぽい町の俯瞰と人の心の奥底とを同時に描き出す。

 

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「温室」 ハロルド・ピンター

病院なのか刑務所なのか、どこかの収容施設。

所長と職員らしき人々は、はたして本当に職員なのか?

四桁の番号で呼ばれる収容者たちは

ひとりの職員を残して所長と職員を殺してしまう。

生き残ったのは下級職員と収容者たち。

殺したのは本当に収容者なのか?

 

温室に入るといつも奇妙な気分になるのは

温度や湿度の匂いと、音がどこにも抜けて行かないせいだ。

この戯曲が「温室」と名付けられていることに納得する。

 

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「一丁目ぞめき」 赤堀雅秋

2012年3月。大震災から一年後。

父の葬儀に参列するため二十年ぶりに帰って来た兄。

家業のスーパーマーケットを継いだ弟。

いとこ夫婦と近所の電気屋と葬儀屋と姿を見せない母親。

 

足元が揺れているような震災後の空気感。

その家の人にしか分からない家屋に染みついた匂いが

訪問者の顔をそむけさせるような戯曲。

 

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「背信」 ハロルド・ピンター

ジェリーとロバートは親友。ロバートの妻はエマ。

ジェリーはエマを愛して、二人は七年間不倫を続けた後、別れる。

 

ややこしいのはこの戯曲が、

別れて二年後から始まって時を遡ってゆくことだ。

しかも途中で時間順になったり、それぞれが嘘をついたりするから、

プロットにすれば分かるけど、はたしてどんな舞台になるのだ?

 

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「忘れられた日本人」 宮本常一

長田育恵さんの戯曲「地を渡る船」の主人公、

民俗学者・宮本常一さんの著作。
馬喰の語る言葉をそのまま書き取った『土佐源氏』や
フィールドワークで歩いた村の様子を日記のように
書き留めた文章は民俗学というより昔話。
むしろ、忘れられた日本人の生活は
遠い異国の物語のようですらある。

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「十二夜」 W.シェイクスピア

嵐の海で生き別れた男女の双子ヴァイオラとセバスチャン。

オーシーノ侯爵は伯爵令嬢オリヴィアに求婚しているが

オリヴィアは男に化けたヴァイオラに一目惚れ。

ヴァイオラはオーシーノ侯爵を愛しているけれど

侯爵はヴァイオラを男だと思っていて……。

 

シェイクスピアお得意の恋のドタバタから騒ぎ。

少女マンガのラブコメものって

シェイクスピアが400年以上前に書いたのと同じなのね。

 

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「新・ワーグナー家の女」 福田善之

R.ワーグナーの息子ジークフリートと結婚したヴィニフレッド。

その娘フリーデリンドはマウジ(ハツカネズミ)という愛称で呼ばれる。

ヒトラーと親交のあったワーグナー家はナチスの協力者として裁かれる。

ナチスを嫌ったマウジはトスカニーニを頼って国を出る。

ワーグナー家女ヴィニフレッドはワーグナーの音楽を守るために生きる。

 

戦争、ナチス、ユダヤ人、虐殺、芸術、人間、母と娘。

重すぎる歴史の上にワーグナーの音楽が流れる。

 

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