「マリアの首」 田中千禾夫

原爆で崩れ落ちた天主堂と焼けただれたマリア像。

長崎に雪が積もったらマリアの首を盗み出す約束。

信徒であり、看護婦であり、娼婦である鹿の希望と絶望は、

彼女の耳から首へのケロイドのように見え隠れする。

 

終戦の瞬間に戦後が始まった訳ではない。

原爆の後遺症のようにあとから蝕まれてゆく体と心。

苦しみはひきずられて地面に意味のない文字を描く。

傷を負ったことのない私にその痛みは分からない。



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