その178 「じゅんちゃん」

2年生のときクラスに

『鼻たれ じゅんこ』 と呼ばれる子がいた。

 

時々クラスに来るお客さんのような存在で

誰とも話そうとしなかったので

みんなは近寄ろうとはしなかった。

 

小学校では冬の間、プールで金魚を飼っていて

理科の時間にみんなで観察に行っていたのだが

ある時 じゅんちゃんがプールに落ちてしまった。

 

先生がすぐ助け上げたので 大したことにはならなくて

給食の時間には体操服に着替えて

じゅんちゃんは自分の席に座っていた。

 

その姿が寒そうだったので

かいちゃんは自分のカーディガンを貸してあげた。

 

女の子たちが かいちゃんを手招きして

「なんで貸してあげたん? 汚いやん」と言った。

かいちゃんは何とも答えられなかった。

 

まもなく先生が じゅんちゃんを連れにきたので

かいちゃんはカーディガンを返してもらった。

 

「汚い」と言うのは よくないことだと思ったが

結局 かいちゃんはカーディガンに袖を通さず

持って帰って母に「洗濯してくれ」と頼んだ。

 

『偽善者』という言葉はまだ知らなかったが

いい子のふりをした自分を とても嫌な奴だと

かいちゃんは生まれて初めて自覚した。



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