その82 「めばちこ」

”めばちこ” は「柘植(つげ)の櫛」で治す。

 

柘植の櫛は母の鏡台の引き出しに入っているが、

髪をとかすときはブラシを使っているので

”めばちこ” の時くらいしか出番がない。

 

なまこ型というのか、背の部分が柔らかくカーブしていて

ぽってりと厚みのある小さな木の櫛である。

 

櫛の背を畳のへりの黒い部分にしゅっしゅっしゅと擦りつけ、

「めばちこ、めばちこ」と言いながら

すかさず ”めばちこ” に押しつける。

熱を持った櫛の背は熱すぎず心地よい感触である。

 

本当はそのあと井戸をのぞきむのだ、と母が言うが、

大阪の新興住宅地に井戸など無いので仕方がない。

 

”めばちこ”ができるとこれで治ったように思う。

 

東京から転向してきた子が

”めばちこ” のことを ”ものもらい” と言ったが、

そんな呼び名では ”目” のことだと分からないではないか、と

かいちゃんは 東京を少し馬鹿にした。



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