その81 「プールと うちわ」

幼稚園にはタイル貼りのプールがあった。

園児が座っても胸のあたりまでしか水が来ない、

20人位でぎゅうぎゅうになる小さなプールだった。

 

夏の暑い日の午前中に年長さんと年中さんが入り、

水温が上がる午後に年少さんの園児が入る。

 

午前中に用事があって午後から幼稚園に行った時、

年長組の かいちゃんのプールの時間は終わっていた。

 

先生がたぶん気を利かせてくれたのだろう。

かいちゃんは年少さんと一緒にプールに入った。

 

しかし かいちゃんがプールに入っているあいだ、

年長組は”うちわ”作りをしていたのだった。

 

白い うちわに茶色い縦線が三本描いてあって、

折り紙で朝顔を折って自分で貼る。

とんぼのシールを二枚、好きなところに貼る。

 

みんながほとんど出来上がっているのを見て

プールから上がった かいちゃんは呆然とした。

しかし優しい先生は かいちゃんの分の朝顔を折り、

既に うちわに貼り付けてくれていて

とんぼのシールを貼ればいいだけにしてくれていた。

 

工作など少しも好きではない かいちゃんだったが、

「これを自分の ”うちわ ” と言っていいものか?」と

釈然としない もやもやとした気分を 妙にはっきり憶えている。



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