その72 「風呂桶」
祖父母の家ではお手伝いなど全くしなかったから
お風呂がどうやって沸かされていたのか分からない。
たぶん祖父が井戸水を汲んで
祖母が薪を燃やしてくれていたのだろう。
子供とはいえ怠け者の かいちゃんであった。
風呂桶は木で出来ていて丸くて深い円筒形だった。
納屋の横にあって2方が板で囲ってあるだけだから
人が訪ねて来ると 入っているのが丸見えである。
洗い場というほどのものは無くて
板が二枚並べてあるだけだったように思う。
あまり憶えていないのは 夏だったから
ほとんど水浴びで済ましていたのかもしれない。
納屋から伸びた軒が屋根替わりだったので
雨が降ると体に当たってぴちゃぴちゃ冷たかったことと、
陽に焼けた皮膚にお湯がひどく熱く感じられて
早々に湯から飛び出したことは憶えている。