その67 「井戸水」

淡路島の祖父の家は海岸沿いの道に面し、

低い堤防の向こうはすぐ海だった。

 

水着を着たまま道路を横切って海に浸かり、

海から上がると砂浜を歩いてまた道路を渡り、

家の前にある井戸で頭から水をかぶる。

 

井戸にはポンプが付いていて、

長い金属の棒を上下にガコガコと動かすと

太い蛇口から冷たい水がじゃぶじゃぶ出た。

 

蛇口のところには白いガーゼの布がかぶせてあって、

これはゴミや小石を取り除くためである。

 

井戸のまわりにはしょっちゅう小さなカニが出没していて、

たいていは向こうの方が逃げるのだが

うっかりすると挟まれるので要注意だった。

 

井戸水は冷たくて美味しかったが、

どう考えても不思議だったのは

「こんなに海が近いのに井戸水は塩からくない」

ということであった。



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