その64 「ネスカフェ」

家ではコーヒーを飲むことを禁止されていた。

もちろん豆のコーヒーではなくインスタントの粉である。

こどもには毒だ、という理由であった。

 

もともと「あんな苦いもののどこが美味しいんだ」と

こっそり味見をしたことのある かいちゃんは思っていた。

 

叔母の家にひとりで泊まったとき、

朝はトーストとハムエッグとコーヒーだった。

 

叔母は”コーヒー”と言わず『ネスカフェ』と言っていた。

砂糖と牛乳をいっぱい入れると

『ネスカフェ』は甘い子供の飲み物になった。

 

食パンの耳はパサパサして嫌いだったが、

『ネスカフェ』に浸して食べると美味しいことも知った。

 

叔母の旦那さんは外国航路の船員さんなので

外国のような朝食なのだなと

かいちゃんは洋風の生活に憧れを抱いた。



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