「表に出ろいっ!」 野田秀樹

お能の宗家である父親はデスティニーランドに出かけようとしている。

母親はジャパニーズのコンサートに行こうとしている。

娘は「ぷにょぷにょ」グッズを貰うためクドクナルドに行かねばならない。

しかし愛犬ピナ・バウシュが今夜にも出産しそうだから

誰かひとりは家にいなければならない。
誰が残るか決まるまでは、誰も表に出られない……。
野田さんの戯曲には、
よく分かるのと、分かりにくいのと、全く分からないのがある。
でもどれも言葉のテンポの良さで最後まで読んでしまう。
舞台だったらさぞかし面白いに違いない。

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「消えなさい ローラ」 別役実

「ガラスの動物園」の別役さん的続編。

トムの居なくなった家を葬儀社の男が訪れる。

出てきた母親は娘のローラはベッドで寝ていると言う。

帰りかけた男が忘れた帽子を取りに戻ると

女はローラだと名乗り、母親はベッドで寝ていると言う。

ローラはガラスの動物に砂を降り積もらせながら弟の帰りを待っている。

母親とローラ、二人の人格を交錯させながら、

ローラは三年前にヒソ入りのワインを母親に飲ませたと告白する。

男はトムが死んだこと、もう待つことはないと告げて消える。

 

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「野獣降臨」 野田秀樹

「野獣降臨」は「のけものきたりて」と読む。

のけものは「除け者」の意味なのか?

アポロ11号が月へ降りた日、

ボクサーのアポロ獣一はデビュー戦であばら骨を一本失う。

サーカス団には月の兎。月の兎は伝説の病を持っている。

人が獣にとりつく伝染病。人が犬にとりつけば伏。

人が象にとりつけば像。人の為と書いて偽。

月へ向かうアポロ11号に逆行して太古に遡る船には

骨なしの蛭子一族が乗っている。
ああ、なんだかさっぱり分からない。
分からないけど言葉遊びの摩訶不思議な世界に
いつのまにかとりつかれてしまう野田ウィルスである。

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「炎の人」 三好十郎

ベルギーの炭鉱の伝道師、25才のヴィンセントは

常軌を逸した自罰的行動で職を失い、画家への道を歩み始める。

父との確執、弟テオへの愛と甘え、人としての常識の欠落。
35才、精神を病むヴィンセントの絵は世間に受け入れられず、
フランスでゴーギャンと共同生活を始めるが
ゴーギャンへの憧れと憎悪、劣等感とプライドの間で心を苛み、
自分の耳を切り落として、なじみの娼婦に贈る。
37才、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホはピストル自殺で炎の生涯を終える。
翻訳物の戯曲かと思うほどヨーロッパの匂いがする。
難しい言葉や古臭い言葉がひとつもない。
最後に三好十郎がゴッホに捧げた賛辞のセリフに、
戯曲を読んだだけなのに泣けてしまう。

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「沖縄アンダーグラウンド」 藤井誠二

副題「売春街を生きた者たち」

2010年頃から始まった沖縄の売春街の「浄化」運動。

著者は戦後をさかのぼると共に、この街で生きた人への取材を重ね、

「もうひとつの沖縄」の姿を浮き彫りにしてゆく。

 

脚本の中で1945年8月15日を「終戦」と書いたとき、

「終戦ではない。敗戦だ!」と言われたことがある。

上演後のアンケートだったから無責任な放言のように感じてしまったが、

しだいにその意味が分かってきた。

爆撃が終わっても憎しみや暴力はすぐに終わるものではないということ。

戦争は人間の尊厳を破壊してしまうということ。

 

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「受付」 別役実

神経科の相談室を訪れた男は受付の女から「独身ですか?」と訊かれる。

「妻と子供が四人」と答えたところからカンボジアの飢えた子供のこと、

パレスチナ難民援助協会の受付女性の結婚、アイバンクへの登録、

遺体の献体まで話はどんどん進んで行く。

 

男1人、女1人の会話劇。

仮定や質問が決定事項にすり替えられていくパターン。

ささやかな悪意を持った女性と、いつのまにか自分を見失う男性。

人はこんなふうに騙されていくんだな。


映画 「淵に立つ」 深田晃司監督

平凡で幸福な家庭ではみんなが少しずつ不満を抱えている。

そのままならずっと幸せにやっていけたはずなのに

ひとりの男の出現がわずかな歪みを大きくしてゆく。

人を殺めた過去を背負う誠実で清潔な男。

ささやかな秘密と嘘と真実と偶然の積み重ね。

故意か事故なのか10才の娘は障害の残るケガを負い、男は消える。

8年後にやってきた青年は男の息子だと言い、

無垢な真実は家族をどこまでも追い詰めてしまう。

 

誰でもが持っている人としての不条理。

悪意でもなく善意でもない嘘や真実。

歪みはじめた家は小石がはねたほどの衝撃で崩壊する。

 



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